初めて

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4.帰郷

川谷は病室のベッドの上から惚けたように外を眺めていた。少しだけ開いた窓からは心地良い風が吹き抜けてくる。雲ひとつない快晴で、公園の芝生で遊ぶ子供たちや、のんびりとくつろぐ大人たちの姿が見てとれた。心安らぐ昼下がりの光景であるが、それを眺め...
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3.救出

その日の深夜。件の廃工場から30mほど離れた場所に相良と花城の姿があった。二人は背の高い草の茂みに身を隠し、工場の様子を伺っている。周囲に灯りは全くないため、色濃い闇が支配していた。そのため、持参した懐中電灯を消した後は相良にはほとんど何...
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2.邂逅

川谷の自宅を訪問してから3日が過ぎた。橋口はその日のうちに家族に連絡してくれていた。その後、家族からも川谷に連絡を取ったが、繋がらなかったため警察に捜索願いを出したようだ。現在、川谷の自宅周辺は警官や刑事とみられる人間が捜査のためにうろつ...
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1.失踪

「相良くん、ちょっといいかな」 険しい表情をした上司に呼ばれて、ひとりの男が席を立つ。年の頃は二十代後半。中肉中背で、顔は中より少し上といったところか。若干下がった目尻のせいか性格は温和なように見える。突然、呼ばれて緊張しているのか...
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新たな神の狂詩曲

突然、失踪した女性を捜す男は、謎の美女と出会い、新たな神の生み出したこの世ならざる者たちの存在を知る。 果たして男は無事に女性を見つけ出し、救うことができるのか。 3話+エピローグの短編ローファンタジーです。