小説 第8話 魔女の慟哭 陽が傾き始め、辺りが赤に染まる。今の時期は陽が長いため、まだしばらくは明るいが、あと一時間もすれば周囲は闇に包まれるだろう。リアとネンコはそうなる前に火を起こそうと、木の枝や落ち葉を集めていた。結構な量を集めた後、ネンコは言った。 ... 2022.07.03 小説
小説 第7話 ネズミの王 意気揚々と旅を始めたリアとネンコの二人だったが、しばらくしてネンコが突然歩みを止めた。 「勢いで歩いてはみたものの、どうしようか?」 「えー……」 ネンコの言葉に、リアは足から力が抜けそうになる。彼が意気揚々と歩き始めた... 2022.07.03 小説
小説 第6話 軍神の聖女 それから三日後の早朝、町の外れにある軍神ヨーダを祀った神殿にアルフォートの姿はあった。ミスタリアの国教は再生の女神アルトラを崇めるアルトラ教であり、最近までは他教を信仰する者などほとんどいなかった。しかし、不死王斃しの一人であり、軍神ヨー... 2022.06.30 小説
小説 第5話 真の騎士 荒々しい足音が辺りに響く。 ここはミスタリア王国の王城シャイニング・ロード。百年以上の間、王国を守り続けた堅城である。城の周りは高い壁で囲まれており、所々に開いた穴からは大型の弩弓が不遜な侵入者を狙っている。また、主塔を囲むように4... 2022.06.30 小説
小説 第4話 少女とネズミ リアはそれからほどなくして目を覚ました。体はだるく頭も重いが、体は動くようだった。上半身だけ起こして、周囲を見回す。そこは先ほどまでいた森ではなく、ひらけた草原だった。周りには誰もいない。リアの頬を爽やかな風が撫でていく。まだ夜は明けてい... 2022.06.26 小説
小説 第3話 謎の強者 リアが死を覚悟してから、どれほどの時間が経っただろう。彼女は暗闇の中にいた。 (私……死んじゃったんだ) 漠然とそう理解する。体が宙に浮いたような、時間という概念から外れたような不思議な感覚を味わっていた。父親との約束は守るこ... 2022.06.26 小説
小説 第2話 魔獣との死闘 最初に狙われたのは、男の方だった。突然、体が大きく横に跳ねる。男は冗談のように大きく宙を舞い、おかしな体勢のまま頭から着地した。地上に落ちたそれはしばらく小刻みに震えていたが、やがて動かなくなる。 「もろい、実にもろい」 聞く... 2022.06.26 小説
小説 第1話 追われる少女 辺りは闇・・・・・・夜の闇。その中を何度もつまづきそうになりながら走る一人の少女がいた。歳は十を過ぎた頃だろうか。夜を連想させる黒髪が月明かりを受けて輝いている。幼さないが整った顔立ちをしており、将来は美しい女性に成長することを予感させた... 2022.06.26 小説
小説 第6話 廃屋にて 紺のローブに身を包んだ男が深夜、人気のない廃屋の前で佇んでいた。歳のころは二十代後半。貴族を思わせる整った顔立ちをしているが、ボサボサの髪と無精髭がその魅力を損なわせていた。右手には先端に大きな宝石をあしらった杖、左手には白銀に輝く小剣を... 2022.06.20 小説
小説 第1話 地獄の裂け目にて 「その儀式をやめろ!」 若い男の怒号が広い室内に響き渡る。しかし、それに反発するかのように禍々しい祈りの声はより一層激しさを増した。 ここは「地獄の門」と呼ばれる十の階層からなる迷宮の最下層。ごつごつした赤褐色の岩肌が露わな部... 2022.06.12 小説